ライトユーザーを有料購読者へとコンバージョンさせる5つの方法

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行は、インターネットの世界に多大な影響を与えており、Web上でのユーザの行動スタイルにも変化が現れました。その結果、パブリッシャーによるマネタイズ戦略にも変化が生じています。
多くの人々がそれまで娯楽として行なってきたことに制限がかかり、「ステイホーム」を余儀なくされたことで、新しい情報源やエンターテイメントを求め、有料コンテンツへのアクセスが着実に増加していきました。しかし、この現象を活用した戦略をどのように構築するかにより、今後のビジネスの成長が大きく変わるということもまた事実です。パブリッシャーが、1ユーザあたりの収益を最大化するには、サイト流入したライトユーザーを、ロイヤルな有料購読者へとコンバージョンすることのできる、適切な価格設定とプロモーション戦略を構築しなければなりません。

価格設定の工程は確かに長く複雑ですが、少しでも簡略化するために、2020年に行われたPiano Academyのセッション「集客の最大化:プライシングとプロモーションの完全ガイド」からいくつかのヒントを集めました。このセッションは弊社の代表取締役・江川亮一が、価格設定とプロモーションの最適化についてや、価格戦略における最良のテスト・構築方法のインサイトについてお話しをさせていただいております。ヒントは以下にまとめましたので、ご一読いただけると幸いです。

1. 知覚価値の理解

価格設定は、原価に応じて決める王道の考え方があります。確かにコンテンツ制作のコストはサブスクリプションの価格を決める要因にはなりますが、それだけではなく科学的そして心理学的根拠を組み込むことで、より適正な価格設定をすることができます。自社サイトのロイヤルユーザーの知覚価値を理解することで、生産コストに依存することなく、価格設定をすることができます。

コアな顧客のコンテンツニーズを理解することで、受け身なユーザを、より高い価格帯のロイヤルユーザーへとコンバージョンするための、価格設定をすることができます。価格設定の調査とテストは、コンテンツのどのような部分が最も評価されているかを理解するのに役立ちます。ユーザーが求めている情報は何でしょうか?より多くの企業独自のリサーチでしょうか?それとも、特集記事のようなコンテンツでしょうか?また、業界リーダーへのプレミアムインタビューのようなコンテンツを求めているのでしょうか。ユーザーは、娯楽コンテンツ、ビジネスコンテンツのどちらを求めているのでしょうか。ユーザーが貴社サイトに対して、どのようなコンテンツを求めているかを明らかにすることで、ユーザーがコンテンツからどのような価値を見出しているのかを正確に把握することができ、現在の価格以上の価値があるのかを知ることができます。それにより価格モデルの最適化が可能となるのです。さらに重要なことは、コアな顧客のニーズを理解することで、サブスクリプション数の増加に合わせ、顧客のエクスペリエンスを向上させることです。

2.  製品カテゴリーを知る

消費者による製品の分類(カテゴライズ)は、その商品の知覚価値に直結します。例えとして、「コンビニのホットコーヒー」と、「高級喫茶店でバリスタが淹れたラテ」の価格の違いを見てみましょう。材料費に大した違いはありませんが、やはりバリスタによる手作りラテの方が、消費者は高い価値を見出し、より高い価格で抵抗なく受け入れます。コンテンツの価格設定にも同様のことが言えるのです。

デジタルでの出版物が、オーディエンスによる直接的な収入ではなく、広告収入型のエクスペリエンスに基づいて構築されていることから、オーディエンスはコンテンツが無料であることが、当たり前であると無意識のうちに考えています。かと言って、エントリー価格の引き下げが必ずしも成功するわけではありません。これは、知覚価値を下げ、価格を元に戻せなくなってしまうだけでなく、収益の損失リスクにつながるからです。正しい価格設定は、知覚価値と消費者が実際に支払う金額を劇的に変化させます。自社の製品をプレミアムオファーとして宣伝し、プレミアム価格で提供することで、コンテンツにプレミアム価格を支払う価値があることをユーザーに知らせることができます。消費者の心理は、実際に利用するリソースよりも価格設定に影響を与えることが多いですが、適切なオファーを提供することで、消費者が製品をどのように評価するかに影響を与えることができます。

3.  早い段階でデータを活用する

一度製品が市場に出てしまうと、大幅な価格変更が難しくなります。すでに製品を購入しているお客様の反感を買ったり、疎外感を招いてしまうだけでなく、社内のロジスティック上の問題からも、価格をむやみに変動させることは避けるべきでしょう。

より効果的なアプローチは、製品のライフサイクルの早い段階でデータを収集することです。サイト上での実証実験、トライアル、プロモーションを活用する他、価格調査を行い、サブスクリプションの価値を最大化するための最適な方法を判断していきます。特にサイト上での実証検証は、時間を効率的に使いデータ収集することができるため、サブスクリプションの価格設定についてリアルタイムで効果的な判断を下すことができます。新しい価格モデルを導入すると、通常は数週間以内に成果を確認できます。これにより、長時間の調査プロセスなしで、より大きな決定を下すことができます。

早い段階で明らかに価格設定が成功している場合を除き、テストを終了する前に各ブランチで100回のコンバージョンを達成目標にすることをお勧めします。これは、市場に対する消費者の関心が反映していることを確認するためです。次の事項を分析することをお勧めします。

  • コンバージョン数
  • コンバージョン率
  • 製品階層間の月次・年次の比率
  • 1年間の顧客LTV(顧客生涯価値)

ビジネス収益を最大化させる為には、価格の最終決定を行う前に、これらの指標やその他の主要データの分析を行う必要があります。

4. 相対的な価格設定が効果的

オーディエンスを希望の価格設定に誘導する別の方法として、デコイ価格の設定があります。デコイとは囮(おとり)を意味する言葉で、この場合、低・中価格の商品を強調し、より魅力的に見せるために、高価格のオプションを設定することを指します。例えば、デジタル版の購読者には月額と年額のオプションと共に、高額なプレミアムプリント版付きデジタル購読をより高い価格で提供するといった方法です。

しかし、最終的には、シンプル且つオーディエンスがわかりやすく、選びやすい価格設定が1番効果的であることがわかっています。 

  • 割引率をパーセンテージではなく金額で表記することで、より高いコンバージョン率を実現できます
  • 比較検討した価格設定を提示する
  • 年額プランなどの長期プランにおいても、実際の支払額と割引額を1か月あたりの金額で表示する

5. 無料トライアルの実施は注意が必要

トライアルは、オーディエンスがサンプルコンテンツを視聴する機会を提供し、サブスクリプション契約へと導く効果的な方法ですが、トライアルを通して購読を始めたオーディエンスが、初月で解約してしまうことは少なくありません。毎月自動更新される定価のサブスクリプションサービスの継続率の中央値は86%であり、同様に有料トライアルも、例え100円という低価格であっても初月の継続率は81%で、継続した顧客は定価のサービスに移行する一方で、無料トライアルの初月の継続率は70%に留まっています。

この継続率の差異はトライアル自体によるコンバージョンの増加を相殺してしまいます。つまり、定価のサブスクリプションの価値に合わせるためには、無料トライアルはコンバージョン率が2倍近く必要になります。これは、加入者数を素早く増やすための手っ取り早いオプションではありますが、LTV(生涯価値)は一般的に低くなります。年間プランへのディスカウントプロモーションは、プロペンシティが低いユーザに対してのより効果的なアプローチとなります。

以上が価格設定の為にPIANOがまとめたヒントです。Piano Academyのこちらのセッションではさらに詳しい説明がされておりますので、ぜひご覧ください。皆様のサブスクリプションビジネスの発展に少しでもお役に立つことができれば幸いです。

お問い合わせはお気軽にcx-info-j@piano.ioまでご連絡ください。