アトリビューション分析活用法

マーケティング・アトリビューションとは、各マーケティングチャネルが収益生成にどの程度貢献しているかを分析し、可視化する手法です。効果的なアトリビューションは、企業がマーケティング目標を達成するための基本的な要素になります。

なぜアトリビューションが重要なのか

顧客とつながるために使用する様々なマーケティング手法を評価することで、効果的にオポチュニティ、パイプライン、収益のパフォーマンスを測定することができます。その方法を以下で説明します。

ユーザーとのあらゆる接点に関する理解をもたらすアトリビューション

見込み客との接点とは、ファネル全体で以下のような潜在的なアカウントとのあらゆるポイントが含まれます。

  • ウェブ上での行動
  • 登録や申し込みのフォーム
  • コンテンツのダウンロード
  • 商品の購入

この情報を活用することで、マーケティング・ミックスを最適化するために前もって対策を講じることができ、セールスチームが効率的にリードとのコミュニケーションをとるために必要な、貴重なインサイトを提供することできます。

多数のマーケティングチャネルを把握することが可能

現在、ブランドが消費者との接点として利用できるチャネルの数は増え続けています。それは消費者がコンバージョンする際に、どのようなタイプのユーザーコミュニケーションが最も効果的かを知ることが、ますます複雑になってきていることを意味しています。アトリビューション分析はそれを理解する鍵であり、顧客理解やマーケティングキャンペーンのROI最大化を図ることが可能です。

アトリビューションでユーザーの全体像を知る​

アトリビューションは、オムニチャネル時代には特に重要であり、ユーザーのタッチポイントを360度把握することが不可欠です。正確なトラッキングとレポーティングにより、カスタマージャーニーにおける様々なタッチポイントの働きを評価し、どのタッチポイントが最も影響力を持っているかを評価することができます。

自社データを最大限に活用

アトリビューションは、マーケターがファネルの指標にどのように貢献しているかを理解するためのデータをまとめたものでもあります。このデータに基づいて、ユーザーのコンバージョン、購入、サブスクリプションのフローで適用されるモデル、手順、およびソリューションを指定することができます。

コロナ禍による、デジタルニーズの増加にあやかる

新型コロナウイルスの大流行により、商業活動におけるデジタルニーズが急速に拡大している状況である現在、アトリビューションは特に重要なものとなっています。デジタルマーケティングは、かつてないほど多くのユーザーにリーチし、コンバージョンをもたらしています。

アトリビューションのメリットとは?

アトリビューションにより、マーケターは効果的なセールス成果を得るための手法を最適化することが可能です。以下のようなメリットがあります。

  • ベストなタイミングでキャンペーンを行うことができる:1人1人のユーザーに適切なブランドメッセージを、効果的なタイミングで展開することで、チャネルとデバイスの数を増やします。
  • マーケティング部門と営業部門が同じ目標に向かって連携できるようになる:アトリビューションはマーケティングとセールスチームとのコミュニケーションを円滑にするので、より正確な予測を可能にし、セールスチームの目標達成を促進します。
  • さまざまなマーケティング施策の真の価値を理解することができる:アトリビューションにより、マーケティング活動の価値や予算を会社のトップ層・取締役会レベルに証明することができるので、予算配分を最適化し、マーケティング予算の削減を防ぐことができます。

アトリビューション戦略構築のステップ

効果的なマーケティングアトリビューションを実現するためには、さまざまな要素を考慮する必要があります。6つのステップのアプローチを以下にご紹介いたします。

1.分析の目的と最も適切な期間の設定

アトリビューション戦略の第1ステップとして、貴社ビジネスのあらゆるマーケティング活動に着目し、その最終目標を設定することです。これが、メディアミックス全体の効果を評価する、主要なKPIとなります。例として以下のようなものが考えられます。

  • ナーチャリング回転率の促進
  • ROI向上
  • トラフィック最大化

2. 関連性の高い情報の収集・集積

第2ステップは、キャンペーンやコンバージョン施策に関連する情報の収集・集積です。これには以下に記載する内容の理解が必要になります。

  • キャンペーン: タグ付けはキャンペーン戦略に合わせて調整し、関連するマーケティング活動を行えるようにする必要があります。マーケティング予算を様々なマーケティング・チャネルに割り当てる場合は、各キャンペーンに個別にタグ付けする必要があります。これには、各SEA(検索エンジン広告)キャンペーンのための予算設定だけでなく、より細かいレベルの粒度(細分性)が求められます。キャンペーンのタグ付け戦略においても同程度の粒度が必要です。
  • コンバージョン: コンバージョントラッキングと同様に、タグ付け戦略はビジネス戦略に沿ったものでなければなりません。2種類の製品を販売している場合、タグで製品タイプを区別する必要があります。この区別は、高い粒度(細分性)を提供する為に、アトリビューション分析内で明確にしなければなりません。トラッキングの粒度が高ければ高いほど、アトリビューション分析の関連性も高まります。

3. 消費者の行動とコンバージョンの過程に注目

アトリビューション分析のコア部分での、消費者の行動を理解する為に、以下の事項について把握する必要があります。

  • コンバージョンまでに必要なタッチポイントの平均数
  • 最初の広告インタラクション(ユーザーの広告に対する行動)から、サイトへの初回訪問までの平均時間
  • 各製品の購入者のプロフィール

消費者の行動全てをトラッキングし、1人1人のユーザーの様々なアクションを、時系列でリンクさせることで上記の項目の把握が可能となります。また、ユーザーは社内で使用する複数のプラットフォームに存在することもよくあることです。360度どこからでも消費者を見渡せる環境を維持するには、全ての顧客向けプラットフォームでキャンペーンやコンバージョンイベントを測定する能力と、全ての情報を一箇所に集約できる環境が必要です。

4. 消費者の流入経路における各施策と、そのエンゲージメントを分析する

消費者のプロフィールを作成したら、貴社のデジタルコミュニケーションシステムに適しているかの確認が必要です。

消費者はブランドのコンテンツに対するエンゲージメントが高い一方、サイト上の広告へのエンゲージメントは低い傾向があります。そのため、消費者を中心としたアプローチを維持しつつ、アクティブな全ての広告提携先に向け、オンラインとオフラインに関わらず、消費者とブランド間の全てのタッチポイントを含む、オンラインとオフラインの流入経路を構築することが重要です。

5.適切なアトリビューションモデルの選択

アトリビューションモデルに正解や不正解はありません。重要なのは、自社のビジネス戦略に最も適したアトリビューションモデルを選択し、そのモデルに対するパフォーマンスのベンチマークデータを長期的に集積し、向上している事実を確認することです。

以下にいくつかの例をご紹介します。

  • 新規ユーザーを獲得する必要があるビジネスでは、カスタマージャーニーの初期段階に焦点を当てたアトリビューションモデルを選択します。ファーストタッチモデルやポジションベース(U字型モデル)モデルがそれに該当します。
  • 有名なブランドであり、大規模なユーザーベースを持ちながら、ユーザーのコンバージョン獲得に苦労している場合は、ラストクリックモデルや減衰アトリビューションモデルが適しています。
  • 初回訪問から購入までのカスタマージャーニーが長く、すべてのタッチポイントがコンバージョンに重要な役割を果たしているサイトでは、線形アトリビューションや減衰アトリビューションのモデルが最適です。

6. アトリビューションウィンドウの最適化

最後のステップは、適切なアトリビューションウィンドウを選ぶことです。これはバランスの問題でもあります。正確なアトリビューション分析を行うためには、購入に関連する消費者とブランド間の全てのインタラクション(やりとり・動き)を把握することです。したがって、アトリビューションウィンドウは、全ての行動を把握することができる十分な情報量の提供が可能なものである必要があります。

しかし、アトリビューションウィンドウで表示する情報が多すぎる場合、関連性の無いインタラクションまでキャッチしてしまうため、分析に不必要なノイズが加わり、正確なデータを得ることができなくなってしまうので要注意です。

理想的なアトリビューションウィンドウは、消費者がブランドを知ってから、購入に至るまでの時系列を一括で表示できるものです。しかし最適なアトリビューションモデルと同様に、企業によって最適なアトリビューションウィンドウ長さは異なり、例えば不動産ビジネスは、FMCG(日用消費財)ビジネスと比較して、アトリビューションウィンドウの期間は長く設定する必要があります。

世界のデジタル化が進み、デジタル主導のビジネススタイルに移行するにつれ、マーケティングアトリビューションの価値はかつて無いほどに高まっています。

効果的なデータドリブン戦略を導入することで、以下のような様々なメリットを得ることができます:

効果の低いマーケティング施策のコスト削減:綿密なアトリビューションモデルがなければ、コンバージョンを促進するためにどれだけの予算が使われているかを把握することはできません。各マーケティング施策がコンバージョンまでの経路にどのように影響するかを理解することが重要です。

  • 成果を維持しつつ費用を削減:パフォーマンスの低いチャネル、つまりコンバージョン単価の高い施策を特定し、中止することで成果を維持できるチャネルに注力しつつ、全体の費用を削減することができます。また、中止した施策の予算を新しい施策やツールの費用に当てることで、これまでの成果を失うことなく無駄な支出を削減することができます。
  • ROIの最大化:端的に言えば、アトリビューション分析とは、ROIを達成するためにどの施策を採用するべきかを示すものです。最も影響力のあるチャネルを分析し、良く理解していれば、成果を上げるためにどこに予算を投じるべきかがわかります。アトリビューション・モデルはブランド認知を高め、見込み顧客を購入へと誘導するチャネルや施策に当てる予算の確保にも役立ちます。
  • 消費者とチャネルのインタラクション(コミュニケーション)の理解と最適化:ディスプレイ広告、リスティング広告、オーガニックリーチ、Eメールなど、消費者にリーチするためのデジタルマーケティングチャネルの数が増え続ける中、これらのチャネルがコンバージョンにどのように影響するかを正確に理解することが重要です。アトリビューション・モデルは見込み顧客がファネルを通過する際にどのように各チャネルとエンゲージするかを確認できるだけでなく、これらのチャネルがどのようにコンバージョンへと導いて行くかを把握することができます。
  • 購入までのカスタマージャーニーの最適化:顧客の行動を深く理解すればするほど、より良いサービスを提供することができます。それにより、きめ細かく調整されたアトリビューションモデルを採用することで、最大数の見込み客に対し効率的、且つ効果的な購入までのカスタマージャーニーを構築することが可能になります。各マーケティング施策を顧客のニーズに合わせカスタマイズすることで、顧客が最も影響を受ける可能性の高い最適なポイントを特定し、施策を打つことができるので、消費者とより強固な関係性を構築し、ブランドへのロイヤリティとLTV(顧客生涯価値)の促進が可能となります。